港湾は地味な作業ほど怖い|綱取りとシャックルで死ぬを覚悟した話

港湾の危険、というと——荷崩れとか、重機とか、いかにも"ヤバそうな"場面を思い浮かべると思う。でも、現場におる僕が一番こわいと感じるのは、もっと地味な作業のほうよ。船を岸につなぐ「綱取り」も、ボルトを締めるだけの作業も、油断したら普通に死ぬ。この記事は、僕が実際に「ヒヤッ」どころか「死ぬかと思った」2つの話。これから現場に入る人に、地味な作業ほど気を抜いたらいけん、と伝えたくて書く。

① 綱取り|ロープ一本に、とんでもない力がかかる

まず綱取り(つなとり)。船が岸に着いたとき、船を岸壁につなぎとめる作業よ。一見、ただロープを掛けるだけに見える。でも、これがあなどれん。

流れはこう。まず船の上から、軽いおもりの付いた細いロープを投げてもらう。それに繋がっとる本番の太い係留ロープを、岸壁まで手繰り寄せて、岸壁にある鉄の突起(船をつなぐための柱)に掛ける。

で、こわいのは「張ったとき」の力。船をつなぐロープやけん、ピンと張ったときには、船を動かすほどの、とんでもない力がかかる。

僕が働きよった頃、他の港であった事故として聞いた話。港湾系は、こういう事故事例がよう共有されるんよ。——係留に小さい船を使っとって、ロープを取って引っ張ったら、たまたまその小船の下にロープが回っとった。そのまま張った瞬間、ロープの力で小船が跳ね上げられて、事故になった、と。ロープは、張ったら凶器になる。これは大げさやなくて、ほんまの話。

② シャックルのナット|こぶし大の鉄を、10m上で落としかけた

もうひとつは、僕自身が本気で「終わった」と思った話。

10mぐらいの高さのタンクに、玉掛け(クレーンで吊るための準備)をしに行ったときのこと。使うのは、10トン用のシャックル——荷を吊るための、ぶっとい金具よ。そのナット(ネジ)を締めよった

ところが、「なかなかネジが噛まんなぁ」と手こずっとったら——ポロッと、そのナットを落としてしまった。

このナットが、また大人のこぶしくらいの大きさの、鉄の塊。それが10mの高さから落ちる。もし真下に人がおったら、当たりどころによっては、普通に死ぬ。頭をよぎったのは、その一瞬よ。

——助かったのは、偶然、落ちる途中の足場に引っかかってくれたけん。10m下まで落ちずに、ギリギリ止まった。あのとき、心臓が止まるかと思うた。たった一個のナットで、人の命が消えるかもしれん。高い所での「落とし物」は、それくらい怖い。

地味な作業ほど、気を抜いたらいけん

この2つで言いたいのは、ひとつ。港湾の危険は、派手な場面だけやない。むしろ、「ただロープを掛ける」「ただネジを締める」みたいな、地味で慣れた作業ほど、油断が出て、危ない。

石炭船で10mの石炭がなだれてきた話や、頭の上をクレーンのバケットが行き来する話も書いたけど、ああいう「いかにも危ない」場面は、みんな気を張る。本当に事故が起きやすいのは、気がゆるんだ瞬間なんよ。「慣れた頃が一番危ない」って、よう言われるけど、ほんまにそのとおり。

現場に、ヘルメット・声かけ・合図・立入禁止みたいな安全のルールがしつこくあるのは、こういう瞬間が現実に起きるから。最初は「うるさいなぁ」と思うかもしれん。でも、あれは全部、誰かが実際に痛い目をみて作られたルールよ。

それでも、港湾は続けられる仕事

こわい話ばっかり書いたけど、誤解せんでほしい。危険を分かったうえで、ちゃんと守れば、続けられる仕事よ。強風の日は荷役を中止にするみたいに、「無理せん」判断をしてくれる現場でもある。

大事なんは、「地味な作業ほど、気を抜かん」。これだけ体に染み込ませとけば、港湾は、未経験からでもやっていける現場よ。

よくある質問

港湾で一番危ないのは、どんな作業?
荷崩れや重機みたいな分かりやすい危険もあるけど、僕がいちばん怖いと思うのは、綱取りやボルト締めみたいな"地味な作業"。見た目は地味でも、ロープには船を動かすほどの力がかかるし、高い所で落とした工具一つが命に関わる。慣れて気を抜いた頃が一番危ない。
綱取り(係留作業)は危ない?
危険はある。係留ロープはとても太くて重く、外航船やと大人5人がかりで1本扱うこともある。そして張ったときに大きな力がかかる。業界ではロープの張力が原因の事故事例も共有されとって、油断できん作業よ。
高い所での落下物が、なんでそんなに危ない?
高所から落とすと、小さな物でも大きな威力になるけん。僕は10mの高さで、大人のこぶしくらいあるシャックルのナットを落としかけた。下に人がおったら、当たりどころで命に関わる。やけんヘルメットや立入禁止、声かけのルールがある。
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この記事を書いた人 IT・営業・製造・整備・港湾と、いくつもの仕事を渡り歩いてきました。今も港湾で働きながら、体を動かせて人間関係に無理のない現場はないか探しよります。きれいな成功談やなく、自分が体験したことだけを正直に書いとります。詳しくは運営者情報へ。